カカオレートは一期一会?

 9月から本格的にチョコレート製造が始まり毎日カカオ豆と向き合う日々を過ごしております。
 正直なところ、カカオレート・ラボの店長に就任する以前はチョコレートの味に大きな違いはないと思っていました。強いていうならダーク、ミルク、ホワイトの3種類で味が違うと思っていた程度です。ですが、カカオ豆と向き合い始めてから、カカオ豆やチョコレートの味の違いが分かるようになってきました。

 カカオ豆からチョコレートをつくる工程でいちばんと言っていいほど大切で、難しい工程が「ロースティング(焙煎)」です。焙煎の加減でチョコレートの味がほとんど決まってしまいます。難しさの理由は、豆の状態によって焙煎の温度や時間が大きく変わることにあります。産地の違う豆はもちろんですが、同じ産地の同じ農園から来た豆でも、収穫した年によって大きく変わります。

さらに不思議なことに、同じロットの同じ豆を同じように焙煎してもまったく味が違うこともあるのです。カカオ豆は農作物なので、収穫時期や天気などで毎回味が変わります。
 
 そのため、カカオ豆からチョコレートをつくる際には、「ロースティングプロファイリング」という工程が欠かせません。本番の前に温度や時間を変えながら焙煎テストを繰り返し、その時のその豆にあった焙煎を探します。
 焙煎は「100℃25分」というシンプルなものもありますが、「100℃15分、110℃10分」のように、温度や時間を変えて2段階でおこなうこともあります。こうなってくると組み合わせは無限大に広がります。
 もうひとつ難しいのは味見です。焙煎して、味見、焙煎して、味見を何回も繰り返すので、途中から味がよく分からなくなります。それに加えて、プロファイリングの度にチョコレートを試作するわけにはいかないので、カカオニブを食べてチョコレートが完成した後の味を想像します。もちろんカカオニブはただの豆なので、甘くはありません。そのニブの状態で味見をして、その後の工程でどれくらい味が変化するかをイメージした上で、いちばん良い焙煎を見つけるのです。
 こうして、いくつものパターンを試した上で、理想の味に近いものを見つけ出し、やっと本番の焙煎に入ります。

 日本人の食べ慣れた大手メーカーのチョコレートはいつも同じ味がしますが、小ロットで作られたクラフトチョコレートは繊細な味の変化があります。まったく同じものには出会えない一期一会の出会いをお楽しみください!
無限の可能性を秘めたプロファイリング

コメントを残す